「ほとんど眠れなかった」と感じた朝でも、実際には眠れていることがあります。不眠症の相談の中には、この「睡眠誤認」が少なくありません。睡眠の専門医から聞いた話をもとに、睡眠誤認とはどんな状態なのか、なぜ「自分の睡眠を客観的に知ること」が大切なのかをお話しします。
はじめに
最初に書いておきますが、この記事は株式会社Medisenseの中の人が書いています。Medisenseは、睡眠の専門医が設立したアプリベンチャーで、2025年11月にSleepaというアプリをリリースしました。この記事を書いている私は、Medisenseの共同設立者の一人、エンジニアのMasaと言います。
弊社の代表は、兵庫県で自身のクリニックを経営している一方、東北大学医学部にも所属しており、脳神経内科の専門医として研究と臨床をしています。特に睡眠は専門分野です。
その知見を活かしたアプリ開発・起業のいきさつは note にまとめていますが、今日は、私が彼からレクチャーを受けて理解している範囲で、不眠症・睡眠障害の治療の実際についてお話ししたいと思います。
睡眠障害・不眠症治療の実際
私が知っている某クリニックは、先生自身が「敗戦処理クリニックですよ」と仰るほど、どこでも治らなかった重度の不眠症患者が来院されるクリニックです。そこで行われている治療はどのようなものかというと……
基本的には「カウンセリング」が多いとのことです。それも、患者さん1人に30分とか40分、場合によってはもっと時間をかけて診察されています。
中には、実際に脳のどこかに異常があり寝られなくなっている患者さんもいるそうですが、数としては多くありません。「不眠症」と言われるケースの半分以上は、実は「睡眠誤認」である、というのが先生のご意見です。
「睡眠誤認」とは、「実際には寝られているのに、寝られていないと感じている」状態のことです。
なぜこのような状態になるのか、その原因には様々あるようです。例えば、以下のような場合です。
睡眠誤認のケース
正常な睡眠中でも、脳波的には覚醒状態になっていることは普通にあります(ただ、覚醒しているのは一瞬で、寝ている人はほとんど認識できていません)。睡眠誤認のケースでは、このような覚醒と覚醒の間の時間も「起きていた」と認識し、自分はまったく寝られていないと認識しているケースがあります。
このような場合は「睡眠誤認」に当たり、実際には問題なく寝られています。先生によれば、この場合、治療に睡眠薬は必要ありません。ただ「睡眠誤認である」ということを、客観的な証拠をもとに患者に理解してもらい、納得してもらうことが必要です。治療としては、それで十分なのです。
「十分」と書きましたが、実はそれが最も大変なことでもあります。証拠もなしに「あなた、実際は寝られていますよ。睡眠薬も必要ありません」では、患者は納得しませんし、症状の改善にもつながりません。治療には、客観的なデータを示し、さらには医者と患者がよく話し、医者が言っていることを信じてもらえるように信頼関係を築くことが最も大切なのです。これこそが治療になります。
睡眠誤認とSleepa
さて、ここからは手前味噌なお話になりますが……。「眠れていない」という感覚と、実際の睡眠のずれに目を向けて開発したアプリが、株式会社Medisenseの「Sleepa」です。
Sleepaでは、Apple Watchが記録した睡眠を、このような睡眠グラフで表示します(画面は表示例です)。

グラフの「覚醒」の行に、赤い線で示されているのが覚醒です。一晩の睡眠の途中にも、短い覚醒が何度も記録されているのが分かります。睡眠誤認のケースでは、こうした覚醒と覚醒の間の時間を「起きていた」と感じていることになります。
Sleepaには、その日の睡眠を自分がどう感じたかを記録する「睡眠日誌」もあります。睡眠日誌とApple Watchの睡眠データを見比べることで、「感じている睡眠」と「実際の睡眠」のずれに気付きやすくなります。

治療の現場では、このように患者の睡眠状態を客観的にモニターする方法がほとんどありません。その結果、患者からの問診のみに基づき睡眠薬を処方するケースがほとんどです。それでは、症状はなかなか改善しません。我々は、この問題に向き合うためにSleepaを開発しました。
不眠症、睡眠障害に悩む方へ
不眠症、睡眠障害に悩む方がすべて「睡眠誤認」であるというわけではありません。ですが、まずは正確に自分の状態を把握してから治療にかかりましょう。病気の治療を始めるのは、検査で病気だと判明してからです。
睡眠障害に悩む人の中には、例えば仕事のパフォーマンスを上げるために睡眠の質を上げたいという人や、うつなどの何らかの精神疾患を抱えている人も多くいます。これらのケースについては、また別の記事で取り上げたいと思います。
ただ、いずれにせよ、まずは自分の睡眠の状態を客観的に把握することから始めましょう。ダイエットを始めるのは、体重計にのってから。がん治療を始めるのは、検査でがんだと判明してからです。まずはSleepaを使って、自分の睡眠を把握してみましょう。
Sleepaを開発している株式会社Medisenseは、まだ設立されたばかりのベンチャー企業です。ご意見、サポートのご依頼などは、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。どうぞよろしくお願いいたします。
Sleepa — 睡眠を科学するアプリ
Apple Watchで計測した睡眠データを、AIによる睡眠分析や睡眠日誌と合わせて振り返ることができます。Sleepaの詳しい紹介はこちら。
※ご利用にはApple Watchが必要です。
ご利用にあたって:本アプリは医療機器ではありません。分析結果は参考情報であり、医療診断ではありません。気になる症状がある場合や、睡眠の状態に不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
