睡眠と医療

Apple Watchの「深い睡眠」が少ないのは問題? — 年齢・記録の誤差・見直せること

朝、Apple Watchの睡眠の記録を開いて、「深い睡眠が20分しかない」と不安になったことはありませんか。深い睡眠は体の回復に大切だと聞くと、少ない数字が気になるのは自然なことです。

先に結論を書くと、深い睡眠の記録が少なくても、それだけで問題とは限りません。年齢による変化、記録の誤差、日ごとの変動があるからです。この記事では、深い睡眠とは何か、どれくらいあればよいのか、記録をどう読めばよいのか、そして生活の中で見直せることを整理します。

はじめに

この記事は、睡眠アプリ「Sleepa」を開発している株式会社Medisenseの共同設立者で、エンジニアのMasaが書いています。Medisenseは、睡眠を専門とする医師が代表を務める会社です(Sleepaを作った理由)。Apple Watchの4つの睡眠の段階の基本は、Apple Watchの睡眠データの見方で説明しています。

深い睡眠とは

Apple Watchの「深い睡眠」は、医学でいうノンレム睡眠のN3にあたります。脳波がゆっくりした大きな波になることから、「徐波睡眠」とも呼ばれます。

  • 夜の前半に多い:眠りについてから最初の数時間に多く現れ、明け方にかけて少なくなります。
  • 起こされにくい:いちばん深い眠りなので、物音などでは目が覚めにくい段階です。
  • 体と脳の回復に関わる:成長ホルモンの多くが夜の前半の深い睡眠の時間帯に出ることや、日中に覚えたことの整理に関わることが知られています。
  • 足りないと取り戻そうとする:睡眠不足が続いたあとの夜は、深い睡眠がいつもより増えます。体には、深い睡眠を取り戻そうとする働きがあります。

どれくらいあれば十分?

「深い睡眠が何分あれば正常」という決まった基準はありません。理由は大きく2つあります。

1つは、年齢によって大きく変わることです。子どもから高齢者までの65の研究をまとめた分析では、大人になってからも、年齢とともに深い睡眠の割合が減っていくことが示されています。20代のころと同じ量の深い睡眠を、40代、50代で求めるのは無理があります。

もう1つは、人によっても、日によっても違うことです。参考までに、AppleがApple Watchの精度を確かめた研究の参加者(平均47歳)では、精密な検査で測った深い睡眠は、眠っていた時間の約13%でした。ただし、これは研究に参加した人たちの平均で、「これより少ないと異常」という線ではありません。

Apple Watchの記録は、深い睡眠を少なめに出すことがある

Apple Watchは脳波を測っているわけではありません。手首の動き(呼吸による小さな動きを含む)から、30秒ごとに睡眠の段階を推定しています。

Appleの資料によると、精密な検査と比べたときの段階の取り違えでいちばん多いのは、実際の深い睡眠を「コア睡眠」と判定するものです。つまり、Apple Watchの深い睡眠の記録は、実際より少なく出ている可能性があります。

1晩の数字は、記録の誤差と日ごとの変動の両方を含んでいます。「今日は8分しかない」と1晩で判断するより、1週間ほどの傾向で見るほうが確かです。

深い睡眠が減りやすい場面

記録で深い睡眠が少ない日が続くときは、次のようなことがないか振り返ってみてください。

  • 寝る前のお酒:お酒を飲むと、夜の前半の深い睡眠はむしろ増えることがあります。けれども、夜の後半の睡眠が乱れやすくなります。眠るためのお酒(寝酒)は、勧められません。
  • 夕方以降のカフェイン:寝る6時間前にとったカフェインでも、睡眠が大きく減ったという研究があります。しかも、本人はそれに気付いていませんでした。コーヒーや緑茶、エナジードリンクは、夕方までにしておくと安心です。
  • 寝る時刻・起きる時刻のばらつき:平日と休日で生活のリズムが大きく変わると、睡眠のリズムも乱れやすくなります。
  • 睡眠を細切れにする病気:睡眠時無呼吸症候群などで夜中に何度も呼吸が乱れると、眠りが細切れになり、深い睡眠も減ることがあります。

数字より大切なのは、日中の調子

深い睡眠の量よりも大切なのは、昼間に強い眠気がないか、すっきり起きられる日が多いかといった、日中の調子です。記録の数字が少なくても、日中に困っていなければ、心配しすぎる必要はありません。

反対に、睡眠の記録の数字を「完璧」にしようとするあまり、かえって眠れなくなる人がいることも報告されています。睡眠の研究者たちは、これを「オルソソムニア」と名付けました。記録は、自分の睡眠を知る手がかりとして使い、数字を追いかけすぎないことが大切です。

なお、次のようなときは、記録の数字にかかわらず医療機関に相談してください。

  • 日中の強い眠気で、仕事や家事、運転などに困っている
  • 大きないびきや、睡眠中に呼吸が止まっていることを指摘された
  • しっかり眠ったはずなのに、疲れが取れない日が続いている

生活の中で見直せること

深い睡眠を直接増やす方法はありませんが、睡眠全体を整えることはできます。

  1. 毎朝、同じ時刻に起きる:休日も含めて起きる時刻をそろえると、睡眠のリズムが整いやすくなります。
  2. カフェインは夕方まで、寝酒はやめる:上で書いたとおり、どちらも夜の睡眠に影響します。
  3. 昼間に体を動かし、日の光を浴びる:日中の活動が、夜の眠りの土台になります。
  4. 1晩の数字で一喜一憂しない:変化を確かめるときは、1週間ほど続けてから記録を見比べます。

Sleepaで深い睡眠を確かめる

私たちの睡眠アプリ「Sleepa」では、Apple Watchの記録をもとに、毎晩の睡眠をグラフで表示します。深い睡眠(アプリの表示は「ディープ」)がいつ、どれくらいあったかを、時間と合わせて確かめられます。

Sleepaの睡眠グラフと睡眠スコアの画面。覚醒・レム睡眠・コア睡眠・ディープ睡眠が時間ごとに表示され、ディープ睡眠の時間とスコアの内訳も見られる
  • 睡眠スコアの「段階」:100点満点の睡眠スコアのうち20点は、深い睡眠とレム睡眠のバランスです。深い睡眠が13%以上、レム睡眠が18%以上あるかを目安にしています(Sleepaの中での目安で、医学的な基準ではありません)。
  • 日ごとに見比べる:ホーム画面の日付から、前の夜の記録を順に開いて見比べられます。睡眠日誌をつけておけば、その日にどう感じたかと並べて振り返ることもできます。
  • 30日の傾向をAIがまとめる:「睡眠を分析」を押すと、過去30日間の睡眠時間や寝つき、夜中の目覚めの傾向、いつもとの違いを、AIが短い文章で説明します(AIによる分析の紹介)。

Sleepaは、最初に起動してから7日間、すべての機能を無料でお試しいただけます(無料期間が終わっても、自動で料金がかかることはありません)。

参考:Apple「Estimating Sleep Stages from Apple Watch」(2025年10月更新)/Ohayon MM ほか「Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals」Sleep 27(7), 2004/Ebrahim IO ほか「Alcohol and sleep I: effects on normal sleep」Alcohol Clin Exp Res 37(4), 2013/Drake C ほか「Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed」J Clin Sleep Med 9(11), 2013/Baron KG ほか「Orthosomnia: Are some patients taking the quantified self too far?」J Clin Sleep Med 13(2), 2017


Sleepa — 睡眠を科学するアプリ

Apple Watchで計測した睡眠データを、AIによる睡眠分析や睡眠日誌と合わせて振り返ることができます。Sleepaの詳しい紹介はこちら。

App Storeからダウンロード

※ご利用にはApple Watch(Series 6以降)とiOS 26以降のiPhoneが必要です。AIによる文章は、Apple Intelligenceに対応したiPhoneで使えます。

ご利用にあたって:本アプリは医療機器ではありません。分析結果は参考情報であり、医療診断ではありません。気になる症状がある場合や、睡眠の状態に不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

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