睡眠と医療

Apple Watchの睡眠の割合、正常はどれくらい? — 4つの段階の意味と、良い睡眠の条件

Apple Watchをつけて眠ると、一晩の睡眠が「覚醒」「レム睡眠」「コア睡眠」「深い睡眠」に分かれて記録されます。では、それぞれどれくらいの割合なら正常なのでしょうか。そして、良い睡眠とは、どんな睡眠なのでしょうか。

先に結論を書くと、割合の目安はありますが、幅が大きく、1晩の数字だけで睡眠の良し悪しは決まりません。大切なのは、毎日の記録から自分の睡眠のパターンを知ることです。この記事では、Appleの開発者向けの資料と米国睡眠医学会の分類をもとに4つの段階を整理し、Sleepaでの見え方、割合の目安、良い睡眠の条件、毎日の確かめ方を順に説明します。

はじめに

この記事は、睡眠アプリ「Sleepa」を開発している株式会社Medisenseの共同設立者で、エンジニアのMasaが書いています。Medisenseは、睡眠を専門とする医師が代表を務める会社です(Sleepaを作った理由)。Apple Watchの計測の仕組みと精度は、Apple Watchの睡眠データの見方で説明しています。

Apple Watchの睡眠のカテゴリは、医学の分類に対応している

医学の世界で標準的に使われているのが、米国睡眠医学会(AASM。米国睡眠学会とも呼ばれます)の睡眠の分類です。脳波、目の動き、あごの筋肉の動きを記録する精密な検査(ポリソムノグラフィ)の結果を30秒ごとに区切り、「W(覚醒)」「N1」「N2」「N3」「R(レム睡眠)」の5つのどれに当たるかを判定します。

  • N1:うとうとしている、いちばん浅い眠りです。
  • N2:一晩の睡眠の中心になる眠りです。
  • N3:いちばん深い眠りで、ゆっくりした大きな脳波が出ます(徐波睡眠)。
  • R(レム睡眠):目が素早く動き、体の筋肉の力が抜けている眠りです。夢を見ることが多い段階です。

Apple Watchの記録は、アプリの開発者向けには、HealthKitという仕組みの「HKCategoryValueSleepAnalysis」という値で提供されています。Appleのこの資料には、それぞれの値が米国睡眠医学会の分類のどれに当たるかが書かれています。Sleepaの表示と合わせると、次のようになります。

Sleepaの表示Appleの値米国睡眠医学会の分類
覚醒awakeW(目が覚めている)
レムasleepREMR(レム睡眠)
コアasleepCoreN2(ごくわずかなN1を含む)
ディープasleepDeepN3(徐波睡眠)
床上inBed分類の外(布団にいた時間)

iPhoneの「ヘルスケア」アプリの「コア睡眠」と「深い睡眠」が、Sleepaの「コア」と「ディープ」に当たります。Appleの資料は、コア睡眠を「light or intermediate sleep」(浅い、または中間の眠り)と説明し、夜の大きな部分を占めるN2に当たるとしています。「浅い」と聞くと悪いことのように感じますが、ごく正常で大切な眠りです。

ただし、Apple Watchは脳波を測っているわけではありません。手首の動きや心拍などから、これらの段階を推定しています。同じ名前でも、精密な検査と同じ精度があるわけではないことは、知っておいてください。

一晩の睡眠は、周期をくり返している

睡眠は、同じ深さで続くわけではありません。平均90分ほどの周期を、一晩に4〜6回くり返します。深い睡眠は夜の前半に多く、レム睡眠は明け方に向かって長くなっていきます。

一晩の睡眠の流れの模式図。深い睡眠は前半に多く、レム睡眠は後半に長くなる

Sleepaでは、こう見える

Sleepaのホーム画面で日付をタップすると、その夜の睡眠グラフが開きます。次の画面は、実際の記録の例です。

Sleepaの睡眠グラフの画面に1から9の番号を付けたもの
  1. 床上:布団にいた時間です。記録があるときだけ表示されます(この夜は記録がありません)。
  2. 覚醒:赤い線です。短い覚醒は誰にでもあり、Apple Watchはそれも記録します(「覚醒」が多いのは問題?)。
  3. レム:薄い緑の帯です。
  4. コア:緑の帯です。たいてい、いちばん長くなります。
  5. ディープ:濃い緑の帯です。
  6. 青い点:血中酸素飽和度です。右の100%・90%・80%の目盛りで読みます。「血中酸素飽和度を表示」をオフにすると消えます。
  7. 横軸:時刻です。太字が就寝と起床の時刻です。グラフの下にある矢印のボタンで、表示する時間の範囲を変えられます。
  8. 睡眠日誌を表示する:オンにすると、自分でつけた睡眠日誌がグラフの下に同じ時間の目盛りで表示され、感じ方と記録を見比べられます。
  9. 睡眠スコア:100点満点のSleepa独自のスコアと、時間・効率・段階・呼吸・覚醒の内訳です。

画面の下のほうには、就寝と起床の時刻、睡眠時間、睡眠潜時(寝つくまでの時間)、血中酸素飽和度、覚醒回数、段階ごとの時間も表示されます。割合を知りたいときは、段階の時間を睡眠時間で割ってください。たとえば、睡眠時間が7時間で、ディープが1時間なら、約14%です。

それぞれ、どの程度の割合が正常なのか

眠っていた時間のうち、それぞれの段階がどれくらいを占めるかについては、次のような数字があります。いずれも、Apple Watchではなく、精密な検査についての数字です。

睡眠の段階の割合の比較。教科書的な目安はコア約55%、深い約20%、レム20〜25%。Appleの研究の参加者はコア約66%、深い約13%、レム約21%
段階教科書の目安専門家の合意
コア(N1+N2)約55%(N1 約5%、N2 約50%)N1は5%以下。N2は合意なし
ディープ(N3)約20%16〜20%
レム(R)20〜25%21〜30%

「教科書の目安」は、米国胸部学会の睡眠検査の解説資料の数字です。「専門家の合意」は、米国睡眠財団の専門家のパネルが、大人の良い睡眠の範囲として投票で合意したものです。図の下の段の「Appleの研究の参加者」は、AppleがApple Watchの精度を確かめた研究の参加者(平均47歳、166人)を、精密な検査で測った結果です。

これらの数字を見るときは、次の点に気をつけてください。

  • 正常には幅がある:同じ精密な検査でも、Appleの研究の参加者の深い睡眠は約13%で、教科書の約20%より少なくなっています。「20%ないと異常」というわけではありません。
  • 専門家の間でも、割合については意見が分かれる:米国睡眠財団のパネルでは、睡眠の段階の割合について、合意に達しなかった項目が多くありました。一方で、合意できたのは、「レム睡眠は多いほどよいわけではない(41%以上は良い睡眠とはいえない)」「深い睡眠が5%以下なのは良い睡眠とはいえない(高齢の方を除く)」といった点です。
  • 年齢によって変わる:一般に、年齢が上がると、深い睡眠やレム睡眠は減り、夜中の目覚めが増えます。健康な大人の研究をまとめた分析では、10歳年を取るごとに、睡眠時間は約10分、睡眠効率は約2%下がっていました。
  • Apple Watchの数字は推定:段階の取り違えでいちばん多いのは、実際の深い睡眠を「コア」と判定するものです。Apple Watchの深い睡眠が少なくても、それだけで実際に少ないとは言えません(「深い睡眠」が少ないのは問題?)。

Sleepaの「段階スコア」は、ディープが13%以上、レムが18%以上あるかを目安にしています。これはSleepaの中での目安で、医学的な基準ではありません。

良い睡眠とは、どんな睡眠か

良い睡眠は、段階の割合だけでは決まりません。睡眠研究者のBuysse博士は、睡眠の健康を、規則性、満足感、日中の覚醒度、タイミング、効率、時間といった面から捉えることを提案しています。米国睡眠財団のパネルが、良い睡眠の指標として広く合意したのも、段階の割合より、寝つきや途中の目覚め、睡眠効率でした。これらをまとめると、次のようになります。

  • 時間:大人は7時間以上(米国睡眠医学会など)。日本の厚生労働省のガイドは6時間以上を目安にしています。Sleepaでは「睡眠時間」と時間スコアで見ます。
  • 規則性とタイミング:夜の、毎日だいたい同じ時間帯に眠っていること。Sleepaでは、グラフの横軸を日ごとに見比べます。
  • 効率:布団にいた時間の85%以上、眠っていること。Sleepaでは効率スコアで見ます。
  • 寝つき:30分以内に眠れること。Sleepaでは「睡眠潜時」で見ます。
  • 途中の目覚め:眠ったあとに起きている時間が20分以下で、5分を超える目覚めが1回以下(高齢の方は2回以下)であること。Sleepaでは、グラフの覚醒と「覚醒」の時間で見ます。
  • 満足感:朝、よく眠れて休めたと感じること。Sleepaでは、睡眠日誌のスコアに残せます。
  • 日中の調子:日中に強い眠気がなく、集中できること。これは自分の感覚で確かめます。

毎晩すべてを満たす必要はありません。たとえば、Appleの研究の参加者が眠ったあとに起きていた時間は、平均で35分ほどでした。また、Apple Watchの記録は短い目覚めまで含むので、目安より多く出やすくなります。これらは、自分の睡眠を見るための手がかりと考えてください。

そして、数字より大切なのが、朝の感覚と日中の調子です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、睡眠で休養がとれているという感覚(睡眠休養感)を重視しています。

毎日確かめて、自分のパターンを知る

ここまでの目安は、たくさんの人の平均です。あなたの睡眠がどうなのかは、あなた自身の記録を見なければ分かりません。そして、睡眠は夜ごとに変わるので、1晩だけでは分かりません。だからこそ、毎日確かめて、「自分の普段の睡眠」を知ることが大切です。普段を知っていれば、いつもと違う夜や、変化に気付けます。

次の画面は、同じ人の2晩の記録を並べたものです。

Sleepaの睡眠グラフと睡眠スコア。10月26日は4時から11時で52点
Sleepaの睡眠グラフと睡眠スコア。11月5日は1時から12時で56点

合計の点数は52点と56点で近いのですが、中身は違います。

  • 眠る時刻:10月26日は4時、11月5日は1時で、3時間ずれています。
  • 時間と効率:11月5日は長く眠って時間スコアは満点ですが、覚醒が多く、朝方には長い覚醒もあります。効率スコアは14点に下がりました。10月26日は時間スコアが20点でも、効率スコアは満点です。
  • 段階:どちらも段階スコアは12点で、ディープ13%以上とレム18%以上のどちらか一方だけを満たした夜です。ディープやレムが現れる位置も、夜によって違います。
  • 呼吸と覚醒:どちらも0点です。呼吸スコアは血中酸素の最低値で、覚醒スコアは覚醒の回数で決まります。Apple Watchは短い覚醒も数えるので、覚醒スコアは低く出やすい項目です。

Sleepaでの確かめ方は、難しくありません。

  1. 毎朝1分、昨夜のグラフを開く:何時に眠って何時に起きたか、長い覚醒がなかったかを見ます。睡眠スコアは合計点だけでなく、内訳のどこが低いかを見ます。
  2. どう眠れたと感じたかを、睡眠日誌につける:記録と感じ方を並べると、「眠れなかったと感じた夜に、実際はどうだったのか」が分かります(「睡眠誤認」とはなにか)。
  3. 1〜2週間分を見比べる:平日と休日で眠る時刻はどれくらい違うか。お酒を飲んだ夜や、遅い時間にカフェインをとった夜はどうか。よく眠れたと感じる夜には、どんな共通点があるか。自分のパターンが見えてきます(自分の睡眠を1週間で確かめる方法)。
  4. 30日の傾向をAIに聞く:「睡眠を分析」を押すと、過去30日間の睡眠時間や寝つき、夜中の目覚めの傾向を、AIが短い文章でまとめます。記録がたまると、あなた自身の普段と比べた変化も分かります(AIによる分析の紹介)。

ただし、毎日見るのは、点数に一喜一憂するためではありません。数字を気にしすぎると、それ自体が不安のもとになり、かえって眠れなくなることもあります。1晩の結果は気にせず、流れを見てください。

こんなときは、医療機関に相談を

Sleepaは、病気の診断をするアプリではありません。次のようなときは、医療機関に相談してください。そのとき、毎日の記録は、医師と話すための材料になります。

  • 大きないびきや、眠っている間に呼吸が止まっていることを指摘された
  • 血中酸素の低い値(90%未満)が、何晩もくり返し記録される(Apple Watchの血中酸素の測定は医療用ではなく、手首の動きなどで低く出ることもありますが、気になるときは相談してください)
  • 眠れない夜が続き、日中の生活に影響が出ている
  • 日中の強い眠気で、仕事や運転に支障が出ている
  • 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が続いている

Sleepaは、最初に起動してから7日間、すべての機能を無料でお試しいただけます(無料期間が終わっても、自動で料金がかかることはありません)。

まとめ

  • Apple Watchの「コア」は米国睡眠医学会の分類のN2(とN1)、「深い睡眠」はN3、「レム」はRに当たる
  • 割合の目安は、コア約55%、深い睡眠約20%、レム20〜25%。ただし幅が大きく、Appleの研究の参加者では深い睡眠は約13%だった
  • 段階の割合については、専門家の間でも意見が分かれている。Apple Watchの数字は推定でもある
  • 良い睡眠は、時間、規則性、効率、寝つき、途中の目覚め、朝の満足感、日中の調子で見る
  • 平均は他人の数字。Sleepaで毎日確かめて、自分のパターンを知ることが大切
  • 1晩の点数に一喜一憂せず、流れを見る。気になる症状があれば医療機関へ

参考:Apple「HKCategoryValueSleepAnalysis」(Apple Developer Documentation)/Apple「Estimating Sleep Stages from Apple Watch」(2025年10月更新)/American Academy of Sleep Medicine「The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events」/Billings ME「Interpreting Sleep Study Reports: A Primer for Pulmonary Fellows」American Thoracic Society, 2014/Ohayon M ほか「National Sleep Foundation’s sleep quality recommendations: first report」Sleep Health 3(1), 2017/Patel AK ほか「Physiology, Sleep Stages」StatPearls/Boulos MI ほか「Normal polysomnography parameters in healthy adults: a systematic review and meta-analysis」Lancet Respir Med 7(6), 2019/Buysse DJ「Sleep health: can we define it? Does it matter?」Sleep 37(1), 2014/Watson NF ほか「Recommended amount of sleep for a healthy adult」Sleep 38(6), 2015/厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」


Sleepa — 睡眠を科学するアプリ

Apple Watchで計測した睡眠データを、AIによる睡眠分析や睡眠日誌と合わせて振り返ることができます。Sleepaの詳しい紹介はこちら。

App Storeからダウンロード

※ご利用にはApple Watch(Series 6以降)とiOS 26以降のiPhoneが必要です。AIによる文章は、Apple Intelligenceに対応したiPhoneで使えます。

ご利用にあたって:本アプリは医療機器ではありません。分析結果は参考情報であり、医療診断ではありません。気になる症状がある場合や、睡眠の状態に不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

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